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奄美ワーケーションで感じる、島に残る「肌ざわり感」。触れ合いから生まれる、豊かな働き方

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奄美市 深田小次郎様

奄美市では、2021年7月に情報通信産業及び場所にとらわれない働き方を行うフリーランス等の拠点施設として、奄美市WorkStyle Lab Inno(ワークスタイル ラボ イノー)をオープンしました。

 

これまでも奄美市はフリーランスを支援し、仕事誘致、定住促進、子育て支援(在宅ワーク支援)、フリーランスのビジネス性向上を促進する「フリーランスが最も働きやすい島化計画」を進めてきました。今後はその一環としてワーケーションも取り入れて参ります。

 

今回は奄美群島でさまざまな情報媒体を制作しながらワークスタイルラボの管理も含め、コロナ禍でも新しい働き方や事業を展開する、株式会社しーま代表の深田 小次郎さんのお話をご紹介いたします。

 

奄美市のワーケーションの「今」がわかるオンラインイベント開催のお知らせ

 

<取材対応者>

深田小次郎さん
深田 小次郎(ふかだ・こじろう)
奄美市笠利町須野出身、株式会社しーま代表取締役。
国立鹿児島高専卒業後、東京を中心に本格的な音楽活動を開始。2010年、奄美群島の情報の少なさをきっかけに、奄美群島地域ブログポータルサイト「しーまブログ」を設立。その後も、島のグルメ情報冊子「みしょらんガイド」、女性誌「amammy」、求人誌「ジョブセンバ」といった、さまざまな情報媒体を制作しながら、WEB、フリーペーパー、イベント、動画制作などを通して奄美の魅力を発信。2021年にオープンした、奄美市WorkStyle Lab(ワークスタイル ラボ)の管理も行っている。

 

島内外の人をつなげる、奄美のあたらしい場づくり

−− これまで奄美の情報発信を中心に活動をされていますが、最近の様子など聞かせてください。

 

深田氏:
はじまりは、奄美群島の情報の少なさに課題を感じて、2010年に「しーまブログ」という地域のポータルサイトを立ち上げたことでした。その後、冊子制作やイベントなど情報や魅力発信に特化した活動を約10年続けてきました。

 

3年前から島外だけではなく、島のお土産品などを島民が送り合えるようにしたい思いから、奄美の産直ECサイト「いっちば」をはじめ、「おうちで奄美Trip」といった奄美群島の逸品を詰め込んだギフト販売も開始しました。

 

最近だと昨年の6月に「okuru amami」というギフトショップをオープンさせたこともあり、今は物販業が仕事の大半を占めるようになってきています。

 

それと「あやまる岬」という奄美の観光施設で、海が見えるカフェのプロデュースや観光案内もやっています。その傍ら、奄美市ではじめたコワーキングスペース「ワークスタイルラボ」の運営もやっております。

 

おうちDE奄美Trip!奄美群島まるっと一周セット

 

−− 幅広い活動ですね…!ちなみにワークスタイルラボは、どのような背景ではじまったのでしょうか?

 

深田氏:
奄美市では、「フリーランスが最も働きやすい島化計画」というものを策定しておりまして、6年前からフリーランス向けの講座をやっているんです。もともとは、「地元のフリーランス向けに仕事を斡旋できるようなことができないか?」ということからはじまりました。

 

奄美市と提携してるランサーズさんやGMOペパボさん、ミンネさんにピクスタさん。あと、動画学習のスクーさんと一緒に業務提携を結び、さまざまな講座を島のフリーランスの人たちにチャレンジしてもらい、稼ぐ力を養うということをやっています。

 

そうしたことをやってきて、僕らも「次の段階に向けて、どうしよう?」となっていたときに、奄美市のワークスタイルラボの話があったんです。そこで実際に「場づくりしてみよう!」といった流れになって管理することになりました。

 

奄美の一番の魅力、それは「おおらかさ」をもつ島の人たち

−− 深田さんはUターンされていますが、奄美群島で暮らす人たちの「人柄」や「地域性」など、再発見したことって何かありますか?


深田氏:

東京にいたときは、知らず知らずのうちに東京のサイズというか。なんか縮こまったような生活をしていたように感じます。声の調子も少し下がっていたりとか。

 

島に帰ってから、東京に戻って友達に会うと「お前最近、島に帰ってただろ?」と言われて。「なんでわかったの?」と聞くと、声のボリュームが大きかったり、笑いかたやリアクションもオーバーだそうです(笑)。

 

そうした島の人の「おおらかさ」が良いところというか、解放されていて良いなぁと思います。ある意味では、ちょっと適当かもしれません(笑)。

 

奄美 島でジョブセンバ

 

東京は東京で良いところだし、東京が嫌で島に戻ったというよりは、島でやりたいことが見つかったことが大きいですね。それまでは音楽を中心に活動してCDを出したり、デビューして全国をツアーでまわったりもしました。でも、楽しめていない自分がいたんです。

 

表現の面で自分との戦いというか、自分と向き合うことで満足できない何かがあったのかなと。それが30歳くらいのとき、「何か地域のことや誰かのことをやりたいな」と思ったんです。

 

「しーまブログ」をはじめてからは、誰かのために何かやって喜ばれたときの満足感とか、島の人に喜ばれることがとても良いなって思いました。

 

西郷隆盛も癒された、自然と人の優しさ

 

−− 深田さんが持つ「地域愛」みたいなものは、島の人は強くお持ちなんでしょうか?

 

深田氏:
そうですね。肯定感のような気持ちを持っている人は、割と多い印象があります。今年だと、地元の高校の甲子園センバツ出場が決まって、島が盛り上がっていて。やっぱり離島っていうので、盛り上がりやすいのかもしれません。あと、「島のために何かしたいね」という話は、自然と出てくる感じはあります。

 

それと歴史のことは詳しくないのですが、もしかしたら薩摩や琉球に支配されていた悲しい歴史も関係しているかもしれません。支配されるようになってから、西郷隆盛が2回ほど島に流されてきているんです。

 

島の人たちに勉強を教えたり、一緒に触れ合うことで西郷隆盛がその後、明治維新を進めていくといった歴史的な背景もあって。島ならではのアイデンティティというのは、あると思います。

 

−− 外から来た人たちを排除するのではなく、いろいろな人たちを受け入れてきた優しさのようなものを感じますね。

 

深田氏:
「自然や風景を見て、奄美が良い」という人もいると思いますが、リピーターになる人って「島の人に知り合いができたから」とか、「人に触れて優しかったから」とか聞きます。そうした人たちが多い気はしますね。

 

コロナ禍でみえた働きかたの変化と、島の「肌ざわり感」

 

−− 実際に来られている人たちとの交流などで印象に残っていることなど聞かせてください。

 

深田氏:
ワークスタイルラボは新型コロナウイルス感染拡大の影響で閉館の日も続いてますが、実際に会社に行かなくてもよくなった人たち 4~5 人で、「調べて来ました!」というケースがあったり、コロナになって働き方が変わってきている実感があります。

 

例えば、島の出身で動画制作の仕事をしている人は、この事態を機に奄美に戻って毎日コワーキングで仕事しています。あと、「今リモートで地元に戻ってきているので、仕事できる場所を探して来ました 」という設計の仕事をしている人もいます。

 

それと驚いたのは、新聞社の人で英語で入ってきた記事を日本語にして配信するという翻訳の人がいて。第一線でバリバリ仕事している人も実は、島の出身だったという。「こんな人いるんだ!」ってビックリしましたね(笑)。

 

でも「自分は島を出てしまったんだけど、島をもっとこうしたらいいのに、と島の人にいうと、『出ていったくせに、そういうこと言うな」と言われたりすることもある」という話も聞きました。外にいる人は外にいる人なりに、こうしてほしいと思うこともありますよね。

 

なんか最近は、そうした人たちの意見も地元に伝えたりできるコミュニティをつくれたら面白いなと思ったりもします。

 

−− そうした人たちとの出会いこそ、刺激が生まれて楽しそうな感じもします。ちなみに深田さんが思う「奄美の働きかた」や「島のワーケーション」について、良い点や悪い点などもあれば教えてください。

 

深田氏:
まだ働ける施設自体そんなに多くはないと思うので、場所を選ぶことは出てくると思います。ワークスタイルラボはWi-Fiや環境も整っているので、気軽に利用していただけたらと思います。

 

あと、事前に情報収集すると思うんですけど、ホテルなどの宿泊施設の情報も含めて、そのあたりがまだ整理されてないのは良くないかもしれません。

 

良い点は、やっぱり直行便が多いことですね。東京、大阪、福岡、鹿児島、沖縄と、 LCC も飛んでいるので。離島のなかでも「アクセスの良さ」というのは良いと思います。

 

−− 最後に、これから奄美にいらっしゃる人たちへメッセージをお願いします。

 

深田氏:
時代や社会が変化していくなかで、いろいろなものがデジタル化されてきています。そうしたなかでも人との触れ合いだったり、交流のなかで感じられる「肌ざわり感」って大事だなと思っています。

 

株式会社しーま 味の里かさり

 

大笑いしたり、話し込んだり、一緒に汗を流してみたり、酒を飲んだり。島は、そうした手触り感のある感じが、まだ残ってる地域だと思います。

 

それがときとして、「人に疲れて奄美に来たら、余計に人が近すぎて疲れた」みたいなこともあるかも知れませんが(笑)。

 

今の段階では、島に来てすぐにそうした触れ合いができるというのは難しいと思いますが、我々のコーディネートの仕方とかマッチングによっては、そうした肌ざわり感を感じてもらいたいと思っています。

 

【オンラインイベント情報】

2022年3月15日(火)15:00〜16:00

奄美のワーケーションの「今」がわかる!

「はじまる、南のしあわせの島・奄美のワーケーション 〜奄美の潜在性を、ローカルプレーヤーと経験者が語る1時間〜」を開催します。

気になる方はぜひご参加ください。

 

▼参加申請はこちらから▼

https://amami-workcation.peatix.com/

 

奄美ワーケーション

 

 

 

<聞き手>

日本ワーケーション協会 公認ワーケーションコンシェルジュ(北海道・釧路管内): 清水 たつや(しみず・たつや)

北海道釧路市出身、釧路町在住の地域編集者。言葉と編集と音楽を通して、地域の課題解決に取り組む3児の父。